第2章 戦争の放棄

Chapter 2: Renunciation of War

第2章を構成する唯一の条文である第9条は、つねに憲法改正論議の焦点となってきた。戦後日本の占領政策にあたった連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の高司令官、ダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)は、帝国憲法の改正にあたり個人的に日本の戦後憲法に戦争放棄の条項を盛り込む考えを持っており、戦争の廃棄はマッカーサー草案とも呼ばれるGHQによる草案の要になった。マッカーサーは、特に日本の非武装・民主化を図った初期占領政策で強力な指導力を発揮した。
 第9条は、第1項で国際紛争の解決の手段としての戦争を放棄し、第2項では戦力不保持を掲げている。憲法改正後、1950年に朝鮮戦争勃発を背景に設立された警察予備隊は1952年に保安隊に改組、自衛隊法成立によって1954年には陸海空の自衛隊が組織された。第2項で不保持を規定している「戦力」の解釈、とりわけ自衛隊及びその活動内容の合憲性をめぐっては、法律、そして政治の観点から幅広い議論を引き起こし、戦後日本の市民運動の中心的争点となってきた。

第2章 戦争の放棄

〔戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認〕
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。